【2023年度】住宅ローン控除の上限は?改正内容と申請方法も解説
- #住まいづくり
住宅を購入または一戸建てを建築する場合、住宅ローンを利用します。住宅ローンから借り入れできる額は住宅の種類や居住した年などによって変わります。住宅ローンには控除制度があり、制度を利用することで住宅取得者は経済的な負担を軽減することが可能です。
住宅ローン控除は社会情勢や経済状況により頻繁に改正されるので、事前に制度内容と変更点を知った上で住宅を購入または建築しましょう。
今回は、住宅ローン控除の上限について、2021年度の制度概要を紹介した上で2022年度の変更点を詳しく解説します。住宅ローン控除の申請方法もあわせて紹介するので、ぜひご一読ください。
1.従来の住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅取得者の経済的な負担の軽減を図るために、住宅ローンの年末残高に応じた金額を所得税や住民税から控除する制度を指します。
住宅ローン控除は長く実施されている制度ですが、社会情勢や経済状況の変化に対応するために、税制の改正で内容が変更されることが多い制度です。2022年度から変更された点もあるため、従来(2021年度)の制度の概要を押さえた上で新しい制度について確認しましょう。
◆2021年度における住宅ローン控除の概要(新築住宅の場合)
控除期間 | 10年間(特例を受ける場合は13年間) |
---|---|
控除率 | 1%(10年目まで) |
借入限度額 | 4,000万円 ※認定住宅の場合は5,000万円 |
住民税からの控除上限額(控除限度額) | 13.65万円/年 ※前年度の課税所得に7%を乗じる |
主な要件 |
|
1-1.2021年度の住宅ローン控除の上限額
2021年度における住宅ローン控除では、毎年末の住宅ローン残高の1%に相当する金額を、10年間にわたって所得税や住民税から差し引くことができました。
2021年度に新築住宅に入居した場合、住宅ローン控除を利用できる借入限度額は一般住宅で4,000万円、認定住宅(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅)で5,000万円です。したがって、控除可能額(控除合計額)は10年間で以下のような金額になります。
◆2021年度の住宅ローン控除額の上限(1~10年目)
- 【新築の一般住宅】4,000万円×1%×10年間=400万円
- 【新築の認定住宅】5,000万円×1%×10年間=500万円
ただし、実際の控除額は、以下の(1)~(3)のうち最も小さい額になることに留意しましょう。
- 所得税と住民税額の合計
- 1年当たりの最大控除額(40万円・50万円など)
- 借入残高の1%
なお、特例を受けて13年間に控除延長された方の場合、11~13年目にあたる3年間は、一般住宅で80万円まで、認定住宅で100万円までの控除を受けられます。
2.【2022年度】住宅ローン控除の改正で何が変わる?
住宅ローン控除の制度は、社会情勢や経済状況に応じて随時見直しが行われています。2022年度以降の制度も例外ではなく、2021年度の内容をふまえた上で以下のような制度の変更がありました。
◆2022年度の住宅ローン控除改正における大きな変更点
- 制度の期間延長
- 控除期間
- 控除率
- 借入上限額
- 住宅の種類に応じた優遇措置
他にも所得制限が引き下げられるなどの変更がありましたが、ここでは、上記の5点について詳しく解説します。今後も制度の内容が変更される場合があるため、以下の内容を参考にしながら、入居予定時期における最新情報も確認しましょう。
2-1.制度が2025年まで延長
2020年から現在までに至る新型コロナウイルス感染症の影響により、現在の日本の経済状況は決して良好とは言えない状況です。このような現状をふまえ、経済の回復と住宅取得の促進を目的として、住宅ローン控除の制度自体が延長されることになりました。
2022年度の改正では、住宅ローン控除の適用期限が「2025年12月末までに入居」と延長されています。住宅ローン控除の制度が4年間延長されたことによって、新築住宅の購入をより前向きに検討することができるでしょう。
2-2.新築住宅・買取再販の住宅の控除期間が13年に延長
2021年度の住宅ローン控除制度にも、控除期間を13年に延長する特例がありましたが、原則的には従来通りの10年でした。2022年度の改正では、この特例がなくなり、新築住宅(注文住宅・分譲住宅)や買取再販の住宅の控除期間を「原則として13年」としています。
なお、中古住宅(既存住宅)を取得した場合の控除期間は従来通り「10年」です。また、2024年・2025年に一般的な新築住宅へ居住を開始する場合は、2023年までに新築の建築確認を取得しなければ住宅ローン控除適用を受けられません。さらに、住宅ローン控除対象になっても、控除年数は10年になります。
2-3.控除率が1%から0.7%に引き下げ
2021年度までの住宅ローン控除制度では、新築住宅・中古住宅を問わず控除率は1%と定められていました。しかし、2022年度の改正により、新築住宅・中古住宅ともに、控除率が1%から0.7%へと引き下げられています。
一方で、控除率は従来の制度よりも引き下げられてはいるものの、利用するローンによっては住宅ローン金利よりも控除率のほうが高いケースも少なくありません。うまく活用すれば、住宅ローンの利息分相当の金額を控除してもらえる可能性も高いでしょう。
2-4.借入上限額の引き下げ
住宅ローン控除を利用できる借入上限額が引き下げられたことも、2022年度における住宅ローン控除制度の改正での変更点の1つです。長期優良住宅や低炭素住宅の借入上限額は5,000万円のままで変更はありませんが、新築一般住宅は4,000万円から3,000万円に引き下げられました。
控除率の引き下げと合わせると、2022年度に新築住宅に入居した場合に受けられる控除上限額は以下の通りです。
◆2022年度の住宅ローン控除の控除上限額
- 【新築の一般住宅】3,000万円×0.7%×13年間=273万円
- 【新築の認定住宅】5,000万円×0.7%×13年間=455万円
2-5.住宅の種類により優遇が手厚くなる
2022年度の住宅ローン控除制度改正では、住宅の種類によって住宅ローンの借入上限額が異なる形になりました。基本的には、省エネ性能などの住宅性能が高いほど手厚い優遇を受けられます。ただし、居住年によっても住宅ローンの借入上限額は変わるので、適用要件を確認した上で借入金額を検討してください。
◆2022年度住宅ローン控除制度改正における借入上限額
入居年 | |||||
---|---|---|---|---|---|
2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | ||
新築住宅・買取再販住宅 |
長期優良住宅 低炭素住宅 |
5,000万円 | 4,500万円 | ||
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |||
その他住宅 | 3,000万円 | 0円 ※2023年までに新築の建築確認を取得できた場合は2,000万円 |
|||
中古住宅 |
長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | |||
その他住宅 | 2,000万円 |
3.住宅ローン控除の申請方法と注意点
住宅ローン控除を受けるには、入居した年の収入に関する申告を行うタイミング(入居の翌年の確定申告時)で、確定申告書に必要書類を添えて税務署に申請する必要があります。住宅購入または入居後に、以下の書類を集めておきましょう。
◆住宅ローン控除の申請に必要な書類と入手できる場所(例)
- 住民票の写し(居住地の市区町村)
- 残高証明書(銀行などの金融機関)
- 建物・土地の登記事項証明書(法務局)
- 請負(売買)契約書(自分)
- 給与の源泉徴収票など(勤務先)
会社員の場合、2年目以降は次の2種類の書類を勤務先に提出し、年末調整を受けることが可能です。毎年確定申告をする必要はありませんが、住宅ローン控除に関する手続きは毎年必要になります。
◆年末調整時に必要な書類と入手できる場所
- 年末調整のための住宅借入金等控除証明書(税務署)
- 借入金残高証明書(銀行などの金融機関)
自営業の方や個人事業主の方は、2年目以降も1年目と同様に確定申告期間内での確定申告が必要です。年末調整や確定申告で住宅ローン控除の手続きを忘れていた場合は、期限内に税務署に相談し、申告期限までに還付申告の手続きを行いましょう。
まとめ
住宅ローン控除とは、住宅取得者の経済的負担を軽減する制度のことです。
2021年度は、年末の住宅ローン残高の1%を、10年間にわたって所得税や住民税から差し引けました。しかし、近年の社会情勢や経済状況により改正され、2022年度以降は控除率が1%から0.7%へと引き下げられました。また借入上限額は引き下げられ、新築一般住宅は4,000万円から3,000万円に変更となっています。
一方で、住宅ローン控除の制度は2025年まで延長、新築住宅・買取再販の住宅の控除期間は13年に延長、住宅の種類により優遇が手厚くなるなど、見方によってはメリットになる変更点もあります。
住宅ローン控除を受ける場合は、入居の翌年の確定申告時に確定申告書に必要書類を添え、税務署に申請しましょう。