住まいのコラム
持ち家に固定資産税はいくらかかる?計算方法や軽減措置を解説
- #税金
持ち家の固定資産税は、所有する不動産の価値に基づいて課税される税金であり、日本の税制において重要な位置にあります。持ち家固定資産税は、不動産の所有者にとって重要な財源となる一方で、支払いの負担もあります。
この記事では、持ち家の固定資産税について、計算方法や固定資産税のシミュレーション、特例措置を紹介します。また、持ち家の固定資産税に関する注意点もまとめているので、持ち家や検討中の物件の固定資産税について知りたい方はぜひ参考にしてください。
1. 固定資産税とは?
固定資産税とは、不動産をはじめとする固定資産にかかる税金です。課税対象としては、個人の持ち家や土地などがイメージしやすいでしょう。固定資産税は、その年の1月1日時点で固定資産を所有していれば、個人・法人にかかわらず納める必要があります。固定資産税は住宅購入後、住宅ローンやメンテナンス費用とともに、持ち家とは切っても切れない維持費の一種となります。
固定資産税は地方税となっており、通常、固定資産がある市町村に納付する税金です。また、固定資産税は普通税であり、税収の用途が定められていません。固定資産税は主に、道路や学校、公園などの公共施設の整備や、介護・福祉といった行政サービスなどに使われています。
出典:総務省「固定資産税」
1-1. 固定資産税の計算方法と平均額
固定資産税の計算式は次の通りです。
固定資産税=(建物部分の課税標準額+土地部分の課税標準額)× 税率1.4%
固定資産税は固定資産の購入費用や建物の建築費ではなく、評価時点での評価額を基準に算出します。上記の計算式に含まれる「課税標準額」は、基本的には「固定資産税評価額」と同等です。固定資産税評価額とは、その時点での土地や建物の価値を表す額で、土地と建物でそれぞれ別々に計算します。
ただし、住宅用地として利用される土地には「住宅用地の特例措置」が適用され、一定の割引を受けた課税標準額が適用されます。持ち家の固定資産税を計算する場合は、住宅用地として特例措置の対象となるケースがほとんどです。そのため、一般的な持ち家の場合、課税標準額と固定資産税評価額が一致することはほとんどないと考えてよいでしょう。
住宅用地の特例措置が適用された場合、課税標準額の計算式は次の通りです。
課税標準額=固定資産税評価額×特例措置別の割引率
住宅用地の課税標準額は、上記の通り割引率を掛け合わせることで、実際の固定資産税評価額より低い額になります。
また、固定資産税額の平均相場は約10万〜30万円です。実際に支払う固定資産税額は、納税者個人の保有資産・建物の構造・自治体ごとの固定資産評価額・地価の変化などに応じて大きく変化します。税額を正しく計算するには、さまざまな要因・状況を正しく把握することが大切です。
2. 固定資産税を軽減する特例措置
固定資産税には、税額を減免するための特例措置がいくつか存在します。固定資産税評価額と同様、特例措置も土地・建物それぞれに対して設けられているので、それぞれの措置を整理した上で把握しましょう。
ここでは、固定資産税の軽減措置の詳細について解説します。
2-1. 土地の固定資産税軽減措置
土地の固定資産税に対する軽減措置としては、住宅用地の特例措置が挙げられます。
住宅用地の種類は、小規模住宅用地と一般住宅用地の2種類です。小規模住宅用地とは、住宅用地のうち住宅1戸あたり200平方メートル以下の部分を指します。一方、200平方メートルを超えた部分が一般住宅用地です。一般住宅用地として扱われる土地面積の上限は、家屋の延床面積の10倍までとされています。
特例による納税額の割引は、課税標準額に特例率を掛け合わせて適用します。小規模住宅用地と一般住宅用地では特例率が異なり、小規模住宅用地の特例率は価格の6分の1、一般住宅用地の特例率は価格の3分の1です。200平方メートルを超える土地は小規模住宅用地・一般住宅用地と、それぞれ特例率が異なる部分が混在します。
2-2. 建物の固定資産税軽減措置
建物の固定資産税軽減措置としては、国土交通省の「新築住宅に係る税額の減額措置」があります。「新築住宅に係る税額の減額措置」は新築や建て替え時の初期負担を軽減し、良質な住宅の建築を促すことを目的とした措置です。
新築住宅の床面積が120平方メートルまでの土地については、固定資産税額が2分の1減額されます。減額される期間は限られており、1戸建ては新築後3年間、マンションは5年間減額されます。
新築住宅の税額軽減は期間限定の措置です。もともと2022年3月31日までに新築を建てた場合が軽減の対象でしたが、2年間の期限延長により、2024年3月31日までに建てた新築建物が対象となりました。また、長期優良住宅を建てることで軽減措置期間が延長され、一戸建ての場合は5年、マンションであれば7年の減額が受けられます。
3. 持ち家にかかる固定資産税のシミュレーション
ここでは、固定資産税の計算方法や軽減措置を踏まえ、持ち家の固定資産税の金額についてシミュレーションを行います。計算にあたっての前提条件は次の表の通りです。
【前提条件】
土地 | 住宅 | |
---|---|---|
購入価格 | 1,000万円 | 6,000万円 |
評価額 | 700万円 | 3,600万円 |
評価率 | 70% | 60% |
条件 |
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【固定資産税額のシミュレーション】
経過年数 | 税額 |
---|---|
新築時 | 約26万円 |
築5年 | 約44.8万円 |
築10年 | 約38.9万円 |
築20年 | 約27.2万円 |
築30年 | 約17万円 |
築40年 | 約12.1万円 |
築45年 | 約11.7万円 |
上表の例では、土地面積が200平方メートル以下のため、小規模住宅用地に対する軽減措置が適用され、土地の課税標準額は700万円の6分の1となります。
また、例の住宅の場合、床面積が120平方メートルのため、新築から3年目までは住宅にかかる固定資産税が2分の1となります。新築時の固定資産税の計算式は次の通りです。
(700万÷6+3,600万)×0.014×0.5=約26万円
築5年時点での固定資産税については、例の住宅は長期優良住宅の軽減措置が適用されていないため、住宅にかかる軽減措置の対象外となります。
札幌市では築5年の非木造住宅の場合、建物の残価率が0.8569となります。築5年時点の固定資産税は次の通りです。
(700万÷6+3,600万×0.8569)×0.014=約44.8万円
建物の残価率は年々減るものの、築45年目に建物の残価率は新築時の20%となり、以降は残価率20%として計算します。
4. 持ち家の固定資産税についての注意点
持ち家の固定資産税については、以下の2点に注意する必要があります。
軽減措置の申請 |
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固定資産税の軽減措置は自動的には適用されません。軽減措置を受ける場合は事前に申請する必要があります。
申請手続きは、各自治体の窓口で「住宅用地当申告書」を提出するだけです。申告書への記載事項も、固定資産の所有者の住所と氏名・固定資産の所在地や構造といった情報などとなっており、複雑な内容ではありません。 申請期限は、建築した翌年の1月31日までです。申請をしなかった場合は軽減措置が適用されず税負担が高くなるため、適用できる軽減措置を確認の上忘れずに申告しましょう。 |
不服申し立て |
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固定資産税は納税通知書に基づいて納付します。通知された固定資産税が高すぎる場合、納税者は不服申し立てを行い、審査を要求することができます。申し立て先は、市区町村の役所で固定資産税を管轄する部署です。
申し立ての期限は、納税通知書を受け取った翌日から起算して60日以内と短くなっています。納税通知書を受け取った後はなるべく早く明細に目を通し、必要な特例が適用されているかなどを確認しましょう。 |
いずれも税の納付額を左右する要素です。必ず自分で、軽減措置が適用される要件や納税通知書などを確認しましょう。
まとめ
固定資産税とは固定資産にかかる税金であり、個人の持ち家や土地が対象です。固定資産税は「建物部分の課税標準額」と「土地部分の課税標準額」を足した額に税率1.4%をかけることで算出できます。住宅用地の特例措置が適用された場合は、「固定資産税評価額」に「特例措置別の割引率」をかけます。
固定資産税には特例措置がいくつか存在します。固定資産税の軽減措置を受ける場合、申請期限に注意しましょう。申請期限は、建築した翌年の1月31日までとなっています。
また、通知された固定資産税が高い場合、納税者は不服申し立てをすることが可能です。申し立てにも期限があり、納税通知書を受け取った翌日から60日以内となっているため、納税通知書を受け取ったら早めに内容を確認し、対応することをおすすめします。